素体アートの誕生 |
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素体とは自作のフィギュアを製作するための土台となる全身ボディー部品であるが、通常の使い方でのフィギュア製作でなく、素体パーツを作品の主な材料とする独自の芸術ジャンルを命名して「素体アート」と今回名付けた。 素体との出会いは直接的なものではなく、いくつかの変遷があった。最初のきっかけは2007年に私が企画提案したマリオネットの企画であった。 最初に購入した素体はボークスのものだった。これを分解してみてマリオネット本体に利用できないかと関節などの各部を詳細に研究しているうちに、素体の各部品そのものの造形的な面白さに気付きはじめ、鮮烈なインスピレーションを受けながら遊び感覚でいろいろな部品を組み合わせてみたところ、これは新たな芸術の形になると確信したのである。 私の素体へのアプローチは純粋な造形的興味からだけではない。1980年代半ばから私が始めたインタラクティブアートが私の主な創作ジャンルであり、私の作品はコンピュータや電子回路、メディアなどを駆使したものが主流であったが、かねてからこうしたテクノロジーを使用しなくても、私が最も大切にしてきた鑑賞者が主体となるインタラクティブなコミュニケーションは特別なインタラクティブテクノロジーなしでも成立しうると考えており、日本文化の伝統にはそれが色濃く反映されていると感じてきた。そして今回出会った素体というマテリアルは、そうした可能性を十分に感じさてくれるものであった。 素体は人体という人間にとって最もインスピレーションを与える対象であると同時に、秋葉原を中心にするオタク文化を象徴するものでもある。新しくて古い日本文化の伝統に繋がりつつ、人間の感性に直接的にコミットする力があり、インタラクティブなコミュニケーションを喚起する潜在力を強く感じた。そして、それはやがて造形インタラクティブという概念にまで行き着いたのであった。 |
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