ハンドパンの世界

 ハンドパン(Handpan)はドーム状に加工された二枚の金属板を上下に貼り合わせたUFOのような形状をしていて、素手で叩くのが特徴である。

 ハンドパンの起源は、スイスのスティールパン工房であるPANArt社が、トリニダード・トバゴ共和国のスティールパンを改良して2000年頃に開発した新しい楽器のハング(Hang)である。Hangはスイス語でHand(手)という意味で、ハンドパンは手で叩くスティールパンという意味である。2010年前後まではハングドラムと呼ばれることが多かったが、最近ではハンドパンという呼称に統一されている。

PANArt社のHang

PANArt社のHang

 ハンドパンは直径45~60cm、高さ20~40cm程度のサイズで、上面に通常7つ以上の音階を発する面(Tonefield)があり、真ん中の凸部分は「Ding」と呼ばれ一番低い音を出す。下部には中央にサウンドホールとなる開口部をもつものが多い。音階は全音階や半音階ではなく多様な音階が割り当てられていて、独特の浮遊感のあるサウンドが特徴である。

 ハンドパンはリズム/メロディー/ハーモニーの音楽の三大要素を兼ね備えており、奏法も厳密な決まりはないので様々な奏法による音色が多彩で、ハンドパンメーカーによっても音色が異なるので、演奏者ごとに全く別な音楽世界が生まれている。

 ハンドパンの製造メーカーはスイスのPANArt社に続いて、ドイツ、ベトナム、フランスなどのメーカーからそれぞれ特徴ある楽器が発売されている。

 私が所有する楽器はフランスのメタルサウンズというメーカーのSpacedrumというハンドパンで、60cmの以下のような9音の構成のANAZISKAというタイプである。この楽器は他のメーカーのハンドパンがスチールパンのような澄んだ明瞭なサウンドを指向しているのに対して、ドラム的な音高が曖昧なサウンド成分が多く含まれていて、同じSpacedrumの中でもANAZISKAがそれが際立っていてことがとても魅力的だと感じている。そうした感想から、ハンドパンというスチールパン的なメロディー中心の名称よりも、現在は否定されているハンドドラムの方の名称の方が私にはしっくりきている。ハンドパンという名称でなくハンドドラムパンというのが一番最適だというのが私の提案する意見である。

SpaceDrum ANAZISKA

SpaceDrum ANAZISKA

SpaceDrum ANAZISKA

SpaceDrum ANAZISKA