音楽エンジンについて

1980年代中頃に覚醒した独自のインタラクティブアートのコンセプトに基づいて、インタラクティブアート作品の制作やマルチメディア・パフォーマンスの活動をしてきました。
その中で音楽的な知識が全くなくても感性だけで即興音楽ができるような音楽構造を構想して、それを実現するための音楽エンジンを開発してきました。
初期の単純な構造から出発して次第にバージョンアップして、音楽的な即興演奏できる音楽エンジンのアルゴリズムを1990年代に完成させてきました。この技術は日米の特許の取得を行い、インタラクティブ・インスタレーションでの利用だけでなく、「ドレミBOX」という音楽アプリケーション1990年代中頃の商品化に結びつきました。

その後iOSアプリへの応用も行いアプリへの展開をしましたが、現在は理想的な音楽エンジンの再構築の準備をしながら、今後のさらなる展開を期して計画を練っています。

独自開発の音楽エンジンは音楽フレーズをリアルタイムに生成するアルゴリズムが特徴ですが、これはあらかじめ仕込んだ適切なフレーズを演奏者のタイミングで切り替えて繋ぐことでリアルタイムに柔軟にフレーズを生成する方法であって、コンピュータがアルゴリズムでフレーズ自体を自動生成するのではありません。
ですから、この音楽エンジンが良い音楽を生成できるか否かは仕込むフレーズの内容に完全に依存することになります。それゆに通常の作曲手法とは異なり、演奏者のアクションのフレーズの切り替えのタイミンを考量に入れたフレーズの作曲という、従来とは異なる質の作曲の力量が必要となります。テクノロジーと感性の融合なくしては、誰でも演奏可能な即興演奏というアイデアは実現しません。

独自開発の即興音楽のためのアルゴリズムと演奏者の行動によって柔軟に変化する音楽フレーズの作曲が融合して初めて夢のようなインタラクティブな即興演奏が可能になるのです。
コンピュータや高度なデジタル技術が芸術を創るということなどはなく、ルネサンス期のように芸術とテクノロジーが境界なく融合した世界を縦横無尽に活かせる柔軟な創造性こそが求められる時代になっていて、そこに果たすべき役割が自分に課せられているのだと自覚しています。まだまだ頑張らなくてはいけないと思いは深まるばかりです。