G-H-N(2008)

G-H-N

G-H-N

この作品は、オビツの1/6 (27cm)スケールの女性素体の足と手のパーツを組み合わせたソタイのオブジェが主役のソタイ画である。このオブジェの形を最初に見出した時に、即座にどこかで見た絵に似ていると感じた。慌てて走るようなしぐさと、悲鳴を上げているような上に突き出した両手のイメージは、ピカソのゲルニカのイメージであると直感したのである。

G-H-N(部分)

G-H-N(部分)

たった一体のソタイのオブジェが、ピカソの代表作の絵画のイメージを喚起するのは驚きであった。ゲルニカの絵はかなり複雑で難解な部分が多く決して単純な絵ではないにもかかわらず、何がそうした記憶を呼び起こすのか、画集でゲルニカを丹念に見たところ、確かに両手を上げて叫ぶ女や走る女がいることが確認できた。

ゲルニカのイメージを喚起するこのソタイのオブジェは、このままでも作品でありうると感じたが、このイメージをさらに広げて最高度に表現する方法はないかと研究し、ゲルニカを解釈し直してリメイクした絵と組み合わせたソタイ画として制作されたのが本作品である。

「G-H-N」のG、H、Nはさまざまな意味を含んでいる。一義的にはGはゲルニカを、HとNはヒロシマ・ナガサキを意味しているが、GはGod、General、Genderなど、HはHuman、Heart、Headなど、NはNature、Nation、Negativeなどいろいろな重要な単語の頭文字となっていて、複合的な意味も含んでいる。

ピカソのゲルニカはスペイン内戦中にドイツ軍から受けたゲルニカ爆撃がテーマだといわれているが、正妻以外に同時に関係していた二人の女性の争いの渦中でのピカソの気持ちが本当のテーマだともいわれる。ゲルニカのリメイクを制作するに当たって、そうした知識をもとに独自の解釈を加えつつ、ゲルニカ爆撃をヒロシマ・ナガサキの原爆投下になぞらえた(左側の牛の尻尾にも見える白い煙にキノコ雲が隠されている)。
ゲルニカを自己の解釈のもとに線を単純化し、モノクローム中心の色調のオリジナル作品に対してカラフルな色調にリメイクし、独自のゲルニカ解釈により絵解きを試みた。

独自解釈のゲルニカを背景とすることにより、ソタイのオブジェが喚起するイメージの意味を明確にし、鑑賞者に新たなゲルニカの世界を提示した。