Pendulum Musicシリーズは大きな6つの振り子を動かしたり止めたりするという操作で、シンセサイザーによるコズミックなオーケストラ風音楽を即興演奏できるインタラクティブ・インスタレーションである。
この作品の原型は、1994年に東京の科学技術館で行われたインタラクティブアート展で行った実験的なマルチメディア・パフォーマンスにある。4部からなるパフォーマンスの最後のパートで、8つの振り子を動かす装置での即興演奏をしたが、この装置をインタラクティブ・インスタレーションに適した形態に改造してPendulum Musicシリーズが生まれた。
HyperKeyboardシリーズでの鑑賞者(=演奏者)の音楽への参加形式ではピアノの鍵盤を叩くという行為がリアルタイムに反応する即興演奏が最大の特徴であったが、それに比べてPendulum Musicの音楽への鑑賞者の関わり方は非常に質が異なるものになっている。
鑑賞者の演奏に関与する行為は、どの振り子を選び、どのタイミングで振り出し、そしていつ止めるか、あるいは放置したままにして自然に止まるのを待つかという選択肢だけである。
動き始めた振り子は一往復ごと中央を横切るタイミングで音を発するようになっているが、すべて振り子は周期が異なるため、正確な周期のシンセサイザーの音列が不思議なずれをもって重なっていくという通常の音楽の作曲技法には無い音楽が演奏され、それがコズミックな広がりとなって不思議な音楽の世界を形作られる。
ピアノの鍵盤をリアルタイムに押す行為とは異なり、振り子を動かしたり止めたりするという非常にストイックな演奏行為で、あたかも音楽を視覚で見るように聴きながら音楽の演奏に関わるということがこの作品の最大の特徴である。
また、振り子運動を通した重力との対話や、ジョン・ケージの偶然性の音楽などにも通じる偶然性との遭遇など、従来の形式の音楽では味わえない音楽体験ができるのも大きな特徴である。
Pendulum Musicシリーズはインタラクティブ・インスタレーションとしての2回の展示の他に、上原和夫氏のマルチメディア・パフォーマンスのライブでも数回使用された。
<展示>
- Pendulum Music ACT 1 1995年 第二回双方向美術展(続) SAM MUSIUM(大阪)
- Pendulum Music ACT 2 2001年 コムシード2001 大阪芸術大学芸術情報センター1F展示ホール(大阪)
<展示風景写真>
Pendulum Music ACT 1 1995年 第二回双方向美術展(続) SAM MUSIUM(大阪)